人はなぜ不安になるのか

 

 今に始まった事ではありませんが、日々思ったことをすぐにつぶやけるツイッターを代表として、ネットは多くの情報で溢れています。それらのなかでも、愚痴や罵倒など、見ていてあまり気持ちのよくない言葉というものは特に目につきやすい。こういった言葉を見るたびに私も嫌な気分になるので、なるべくそういった発言はしないようにしています。なかには、”嫌だったら見るな”論法を使い、このような反論をしてくる人もいるでしょう。「ブロック(ミュート)すれば済む話じゃないか!」と。しかし、そんな単純な話で終わらせてはいけないはずです。


 仏教に”三毒”という言葉があります。これらは「貪・瞋・癡(とん・じん・ち)」といい、簡単に言うと、貪は自我、瞋は怒り、癡は無知を意味します。これらをひっくるめて、わかりやすい1つの言葉に表すなら”自意識過剰”がぴったりでしょう。仏教ではこの”自意識過剰”は煩悩とされ、人間の苦しみの根源だとされているのです


 実は、日頃から愚痴を言ったり罵倒したりする人に「自我、怒り、無知」がよく見受けられます。このような人々は”自意識過剰”なのかもしれません。しかし、三毒は煩悩でもあるため、悟りでもしないかぎりこれらの煩悩をなくすことはできません。誰にでも”自意識過剰”に陥る可能性はあるのです。では、苦しみの根源とされる”自意識過剰”はどのようにして助長されていくのか。

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【読書記録】資本主義の預言者たち

 今回取り上げるのはこの本。

 

 この本は2009年に出版された『恐怖の黙示録ー資本主義は生き残ることができるのか』に加筆・修正したもの。2008年のリーマンショックを受けて、19世紀〜20世紀にかけて活躍した5人の経済学者の見解を振り返りつつ、これからの資本主義はどうあるべきかを考える内容となっている。ただし、この本の中心テーマは”経済思想”の振り返りであって、具体的な解決策を提案するものではない。したがって、これから書くことにグラフやデータは出てこないし、わりと抽象的な話になると思う。

出発点

 人は意見を発表するとき、必ず理論を組み立てる。僕にとっては、卒業研究が持論を発表する大きな機会となるわけだけど、卒業研究をするキッカケや動機といったものに「ヴィジョン」が深く関わってくる。「ヴィジョン」とは、理論の前提や基盤となるもののことで、それは日常生活のなかで得られる知識や経験を通じて形成される。「机上の空論」という言葉があるとおり、理論を組み立てる上で、日々の実践から得た経験は欠かせないものなのだ。

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