【読書感想】日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか

日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか (講談社現代新書)

日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか (講談社現代新書)

 

 最近読んだ本のなかで一番おもしろかった。2017年のベスト5に入りそうな予感がする。

 そこで、読んでいて個人的におもしろかった部分をピックアップし、それぞれについて雑感を付記しようとおもう。

敗戦を契機に誕生した戦後日本の精神風土

 日本人がキツネにだまされなくなった理由が本書のなかでいくつか列挙されているが、そのなかでも以下の説が特に興味深かった。

 人間がキツネにだまされなくなった理由として、「科学の時代」における人間の変化をあげる人々もいる。敗戦のときに日本の人々がいだいた気持のひとつは、アメリカの生産力、科学、技術の力の前に、「日本的精神」とか「大和魂」とかいうものが太刀打ちできなかったという思いだった。
 経済成長や科学、技術の振興に対する戦後の人々の強い希求は、この教訓の上に成立したといってもよい。そしてそのことが、科学的に説明のつかないことを「迷信」「まやかし」として否定する戦後の精神風土をつくりだした。(引用:『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』p.41~p.42)

 しかし、アメリカに対する敗北は数ある要因のうちのひとつであって、それが根本的要因かというとそうではないかもしれない。なぜなら『日本教社会学』を参照すれば、「敗戦を教訓とした」というには語弊があるとわかるからだ。*1

 つまり敗戦を契機として、空体語を「大和魂」から「(科学や技術振興をも含めた)西欧的価値観」に臆面もなく置き換えた、と述べるのがより正確なのではないかということである。けっして「敗戦を教訓とした」と言えるほど合理的なプロセスを経ていない。

(次回につづく)